26年くらい前になるだろうか…

 

家づくりのお手伝いをする仕事の『責任の重さ』を感じた

ある本の記事をご紹介いたします

 

神戸で起きた凶悪少年犯罪…

その少年Aが暮らしていた間取り図を考察する記事だった

以下その記事より抜粋すると…

 

…玄関を入るといきなり出鼻をくじかれるように正面に壁が立ちはだかる

手を伸ばせば届くほどの距離だ…右手も壁…

誰しも少なからず圧迫感を覚え

来るものを拒絶しているようにも思える

 

…階段を登りきると唐突に子ども部屋に出る

12帖ほどある広い部屋は事件を起こした14歳の中学生Aの弟たちふたりが

使っている共同部屋である

階段を上がると必然的にこの部屋に出る構造なので

Aが自分の部屋に入るためには弟たちの専用空間を横切らなければならない

個室かというと共同部屋であり共同の子ども部屋かと思うと通路でもある

曖昧模糊でバラバラ加減が記憶に残る

 

…いよいよAの部屋に入ってみる

広さは8帖ほどあるが奇妙に細長い部屋だ

一見普通の子ども部屋に見えなくもないが

入ってみると異様にクローゼットが大きい…3帖ほどはあるだろう

あたりを見回すとテレビと壁との間に若干のスペースがあって

なんと三面鏡が置かれているのだ

 

ふつうの子ども部屋ではない…これだけ大きなクローゼットだから

きっとAだけでなくほかの家族のものも収納されているのだろう…

母親が或いは弟がズカズカ部屋に入ってきてクローゼットからものを取り出すことが

日常的に行われていたのだろう

 

これはAの部屋だが果たして彼のための個室といえるだろうか

子ども部屋でありながら三面鏡が置かれ大きなクローゼットが設けられている…

個室ではなく家族全体の収納スペース的な役目も担わされていた…

そんな気配が漂い

ここにも部屋の性格づけに曖昧さを感じる

 

親の所有物がそこに厳然と存在し続けるのは

部屋の主人公としてのアイデンティティを混乱させることもあり得る

もしこの三面鏡がすでに不用品であり母親がまったく覗きもしない場合だと

ことはさらに深刻だ

 

親の意識しないところで不要品という象徴が

その部屋の主人公にまったく影響を与えなかったとは断言できない

 

 

 

『住居は人間を変えるはたらきがある』

特に子どもにとってそこは世界そのものである

赤ん坊から学校へ進むまでの子どもの世界観はその住まいの中でのみ形成される

 

この本を拝読して…

お客様に間取りのご提案をさせていただく際

インタビューをなるべく多くするし

お住まいになるご家族全員とお話しするようになっていきました

 

結果的に定番オーソドックスなプランニングに行きついたとしても

子どもにとって世界観のベースになることを考えると

4.5帖或いは6帖の個室ひとつとっても真剣に考えます!

 

住まいの評価は様々な観点がありますが

おススメするこの土地やこの家で

住まうご家族が何を思いどのように成長なさっていくのかまで

考え抜く!

 

キレイごとかもしれませんが

私がプロとしてこのお仕事をしていくうえで

非常に考えさせられた本でございました